映画『ラ・ペラ』が描く人間の痛みと動物への暴力
第31回釜山国際映画祭のワールドシネマ部門に招かれたチリ映画『ラ・ペラ』。ドミンガ・ソトマヨール監督の新作で、カンヌ国際映画祭の監督週間でも上映された。映画祭で作品を選ぶ意味を考えながら、本作が観客に突きつける問いをたどる。
舞台はチリ南部の小さな島。主人公のシルビアは幼い頃、海辺の洞窟へ連れて行った年下の少年を行方不明にしてしまった。捜索しても少年は見つからず、シルビアはその記憶を抱えたまま、夫以外の住民とは距離を置いて暮らしている。映画は過去の出来事を直接見せず、彼女が飼い犬のユリに注ぐ強い愛情を通して、癒えない痛みを映し出す。
ユリが家を出たことをきっかけに、シルビアの抑え込んでいた感情は激しい形で表れる。批評家のキム・ソンホは、彼女が犬と争う場面に観客が受ける衝撃を検討する。人間の罪悪感や怒りが、言葉で訴えられない動物へ向けられていく展開は、物語上の表現として受け止められるのかという疑問を残す。
批評の焦点は暴力の描写だけにとどまらない。終盤では、激しい暴力の直後にロマンチックな音楽が流れ、無事な様子のユリを見て安堵するシルビアが映される。その演出が動物への暴力を肯定しているように感じられ、観客の不快感や戸惑いを招くと論じる。映画祭が作品を選び、観客の前に届けることには、完成度や賞の評価に加えて、何を考える機会を開くのかという意味もある。『ラ・ペラ』は、人間の苦しみを描く表現と、動物をどう扱うかという倫理の境界を観客に問いかける。