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深田晃司監督、釜山で感じた観客の熱 『ナギ・ノート』完成まで約10年

映画『ナギ・ノート』で第31回釜山国際映画祭を訪れた深田晃司監督が、映画祭で観客と直接会える魅力を語った。イーデイリーのインタビューで、釜山では観客の熱気をじかに感じられると説明。世界の大きな映画祭の中でも、観客との対話の機会がある点を印象に挙げた。

同作は、日本・岡山県の小さな町、奈義町を舞台にした作品。孤独や家族制度、家父長制の名残を見つめる物語で、映画祭のアイコン部門に招かれた。町を知り、地域の歴史や暮らしを調べながら脚本を形にするまで、監督はおよそ10年を費やしたという。

地域を歩いて見つけた物語

企画のきっかけは、劇作家の平田オリザから奈義町の独特な空気を紹介されたことだった。町の現代美術館を訪れた深田監督は、建築や美術と地域の結びつきに惹かれ、既存の戯曲を映画化する案から、奈義を舞台にしたオリジナル脚本へと方向を変えた。

東京で育った監督にとって、地域社会の暮らしは未知の領域だった。現地で取材を重ねる中で、交通や仕事の選択肢が限られる環境では、家業を継ぐことや農業を営むことが自然な暮らしの一部になると気づいた。そうした土地の条件が、人々の生き方や自分らしさにどう影響するのかを作品に織り込んだ。

見えにくくされた人々と家族のかたち

取材中、地域で暮らす性的マイノリティの人々と出会う難しさも、作品の問題意識につながった。監督は、存在しているはずの人々が地域の話題に上らず、社会の中で見えないものにされていると感じたという。映画では、そうした人々を特別視せず、そこにいる存在として描くことを考えた。

家父長制や家族制度をめぐる視点から、主人公には一人で暮らす女性の芸術家を据えた。登場人物が既存の家族の枠から離れて生きる姿をどう受け止めるかは、観客に委ねられている。釜山での上映後に観客と語り合えることも、監督がこの映画祭に感じている魅力の一つだ。